゙が戻ってきた時、私はうれしい気がした。これらの人々のうちで、この人だけが私にとってはまだ人間である、と私は思った。そして親切な慰安の言葉をせつに求める気持がおこった。
 私たちは腰をかけた、彼は椅子に、私は寝台に。彼は私にやさしく「あなた……」と言った。その言葉は私の心を開いてくれた。彼は言いつづけた。
「あなた、神を信じますか。」
「はい。」と私は答えた。
「あなたは、使徒の旨を体したローマの聖《きよ》いカトリックの教会を信じますか。」
「もちろんです。」と私は言った。
「あなた、」と彼は言った、「疑っているようです。」
 そして彼は話しはじめた。長いあいだ話した。たくさんの言葉を言った。それから、心ゆくばかり言ってしまうと、立ちあがって、話をしはじめてからようやくはじめて私の顔を見ながら、私にたずねかけた。
「どうです?」
 私は実際のところ、はじめはむさぼるように、次には注意深く、次には心をこめて、彼の言葉に耳をかたむけてたのだった。
 私も彼とともに立ちあがった。
「どうか、」と私は答えた、「私を一人きりにしておいてください、お願いです。」
 彼はたずねた。
「いつ戻ってきた
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