@ 二五
私は一つの監房に連れこまれた。そこには四方の壁があるばかりだった。もとより、窓には多くの鉄棒がはまっており、扉に多くの閂がかかっているのは、いうまでもないことである。
私はテーブルと椅子と物を書くに必要なものとを求めた。それはみな持ってこられた。
次に私は寝床を一つ求めた。看守はびっくりした目つきで私を見た。「何になるんだ?」というような目つきだった。
それでも、彼らは片隅に十字寝台を一つ広げてくれた。しかしそれと同時に、私の室[#「私の室」に傍点]と彼らがいってる監房のなかに、憲兵が一人やってきて腰をすえた。私がふとんの布で首をくくりはすまいかと彼らは気づかったものらしい。
二六
十時だ。
おお私のかわいそうな小さな娘よ! これから六時間、そしたら私は死ぬんだ。私はあるけがらわしいものとなって、医学校の冷たいテーブルの上に投げ出されるだろう。一方では頭の型を取られ、他方では胴体が解剖されるだろう。そうした残りは棺にいっぱいつめこまれるだろう。そしてすべてがクラマールの墓地に行ってしまうだろう。
お前の父を、彼らはそういうふうにしようとし
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