lのこともあった。そして金は奪っちまい、馬や馬車はどこになりと行くままにし、死骸は足が出ねえように用心して木の下に埋めた。その墓の上で、土が新しく掘り返されたのが見えねえようにと、みんなして踊りまわった。俺はそんなふうにして、やぶの中に巣くい、野天で眠り、森から森へと狩り立てられ、でもとにかく自由で自分のままで、年をとっていったものだ。だがなにごとにも終りがある。それにだって同じだ。ある晩、俺たちは捕縄の連中にとっちめられた。同類は逃げちまった。が俺は、いちばん年とってたもんで、その金帽子の猫どもの爪に押さえられた。そしてここに連れてこられた。俺はもう梯子《はしご》のどの段も通ってきて、ただおしまいの一段が残ってるだけだった。ハンカチを一つ盗むのも、人を一人殺すのも、もう俺にとっちゃ同じことだったんだ。もう一つ再犯が重なるってわけだ。首刈り人のところを通るよりほかはねえんだ。裁判は簡単に片づいちゃった。まったく、俺はもう老いぼれかけてるし、もうやくざ者になりかけてる。俺の親父は後家縄をめとった〔絞首刑にされた〕し、俺は無念の刃のお寺にひっこむ〔ギロチンにかかる〕んだ。――そういうわけさ
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