[にし、十スーにし、五スーにした。がだめだ。どうなるものか。ある日俺は腹がすいてた。パン屋の窓ガラスを肱で突き破って、パンをひときれつかみ取った。するとパン屋は俺をつかみ取った。そのパンを食いもしねえのに、終身徒刑で、肩に三つ烙印《らくいん》の文字だ。――見てえなら、見せてやろうか。――その裁きを再犯[#「再犯」に傍点]というんだ。そこで逆もどりさ。ツーロンの徒刑場に連れもどされたが、こんどは終身の緑帽だ、脱走しなきゃあならなかった。それには、壁を三つ突き抜き、鎖を二つ断ち切るんだが、俺には一本のくぎがあった。俺は脱走しちゃった。警戒砲が撃たれた。俺たちはな、ローマの枢機官みてえで、赤い服をつけてさ、出発の時には大砲が撃たれるんだ。だが役には立たなかったね。俺のほうでは、こんどは黄色い旅行券はなかったが、しかし金もなかった。すると仲間に出会った。刑期をつとめあげてきたやつもいれば、鎖を打ち切ってきたやつもいる。一緒になれと首領がすすめた。街道でばさ[#「ばさ」に傍点]をやってるんだ。俺は承知して、人殺しで暮らしはじめた。乗合馬車のこともあるし、郵便馬車のこともあるし、馬車に乗ってる牛商
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