父pンを食い、何の役にも立たねえ鉄のたまを引きずる。棒はくらわせられるし、日には照りつけられる。それに頭は刈られてるんだ。俺は栗色のみごとな髪をしてたんだがな! だがまあいいさ……俺は刑期をつとめあげた。十五年、それだけふいになっちゃった。俺は三十二になってた。ある朝、一枚の旅行券と、六十六フランもらった。徒刑場で、日に十六時間、月に三十日、年に十二か月、十五年間働きづめでためた金だ。それはまあいいとして、俺はその六十六フランで正直な人間になろうとした。俺のぼろの下には、坊さんの上っ張りの下なんかより、ずっと立派な気持がひそんでいた。ところが旅行券のやつめ! 黄色なんだ、放免囚徒[#「放免囚徒」に傍点]と書きつけてあるんだ。そいつをどこに行くにも見せなけりゃならねえし、いなかにこっそりひそんでりゃあ、一週間ごとに役場に差し出さなきゃあならねえ。みごとな紹介だ、徒刑囚とさ! こわがらあね。子供は逃げるし、家の戸は閉められる。誰も仕事をくれる者はねえ。俺は六十六フランを食っちまった。それから、かせがなきゃあならなかった。俺は立派に働ける腕を見せたが、どこにも使ってくれねえ。日雇の代を十五ス
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