B司祭さんあなたは知っていますか。私よりくわしいんですか。聞かしてください、どうか。どういうことですか。――まったく、私は新しい話が好きです。それを裁判長殿に話してきかせるんです。すると、面白がりますよ。」
そして彼はやたらに言葉を費やした。司祭と私のほうへかわるがわるふりむいた。私はただ肩をそびやかすだけで返事をしなかった。
「ねえ、何をいったい考えてるんですか。」と彼は私に言った。
「もう今晩は考えなくなるだろうということを考えています。」と私は答えた。
「ああ、そのことですか。」と彼は答え返した。「どうも、あなたはあまり沈んでいますね。カスタン氏は話をしていましたよ。」
それから、ちょっと口をつぐんだ後彼はまた言った。
「私はパパヴォアーヌ氏をも同道しました。パパヴォアーヌ氏はかわうその皮の帽子をかぶって、葉巻をくゆらしていました。ラ・ロシェルの若い人たちのほうは、仲間同士にしか口をききませんでした。でもとにかく口をきいていましたよ。」
彼はまたちょっと間をおいて、それから言いつづけた。
「あの人たちは狂人ですね、熱狂家ですね。世間じゅうの者をみな軽蔑してるようなふうでした
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