ォには、新聞を取っておくように門番にたのんでおいて、家に帰ってからそれを読むことにしています。」
「へえー、」と執達吏は言った、「よくも知らないでいたもんですね。パリの大事件ですよ、けさの事件ですよ。」
私は口を開いた。
「私は知ってるつもりです。」
執達吏は私を眺めた。
「あなたが、そうですか。では、あなたの意見は?」
「好奇ですね。」と私は言った。
「なぜです?」と執達吏は答え返した。「誰でも政治上の意見を持っているものです。私はあなたを尊敬するから、あなたが政治上の意見を持たないとは思いません。私としては、国民軍の復興にまったく賛成です。私はもと中隊の軍曹でした。そしてどうも、それはいいものでしたよ。」
私は彼の言葉をさえぎった。
「さきほどの話は、そのことではなかったはずです。」
「では何のことですか。あなたが知ってる事件というのは……」
「私が言ったのはもうひとつの事件です。そのことでも今日パリじゅうが騒いでいます。」
愚かな彼は会得しなかった。ひどく好奇心をおこした。
「もうひとつの事件ですって? どこでいったいあなたはそういろいろ知ったんですか。何ですか、ほんとに
前へ
次へ
全171ページ中64ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング