@ リルロンファ・マリュレ。
靴には革のほこりよけ、
マリュレ。
けれども王様いらだって、
リルロンファ・マリュレット、
言うことに――どうでもこうでも、
リルロンファ・マリュレ、
彼女をひとつ踊らせなくては、
リルロンファ・マリュレット、
床なしの宙ぶらりんで、
リルロンファ・マリュレ。――
[#ここで字下げ終わり]
唄はそれから先は聞こえなかった。聞こえても私は聞くにたえなかったろう。その恐ろしい哀歌のなかばわからない意味、盗賊と警官とのその争闘、盗賊が途中で出会って女房のところへ差し立てるその盗人、俺は一人の男を殺害して捕縛された――樫の木に汗を流さしてくらいこんだ[#「樫の木に汗を流さしてくらいこんだ」に傍点]、というその恐るべき使命、請願をもってヴェルサイユの宮殿へ駆けてゆくその女房、床なしの宙踊り[#「床なしの宙踊り」に傍点]をさせるぞと罪人を威嚇《いかく》するその憤った陛下[#「陛下」に傍点]……しかもそれらのことが、およそ人の聞きうるもっともやさしい調子ともっともやさしい声とで歌われたのである。私は胸をえぐられ凍《こご》えあがり参らされてし
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