ト窓のところにじっとしていた。けれども、その五すじの綱が進んできて、けがらわしくもなれなれしい言葉をかけながら私のほうへ近づいてきたとき、そして彼らの鎖や叫びや歩行のそうぞうしい音を、壁の根もとに聞いたとき、私はその悪魔の群が私のみじめな監房をのっとろうとしているように思えた。私は叫び声をたて、打ち破るようないきおいで扉にとびかかった。しかし逃げだすすべもなかった。外部から閂がかけられていた。私は扉を打ちたたき、夢中になって呼びたてた。それから徒刑囚らの恐ろしい声がなお身近に聞こえるような気がした。彼らの醜悪な顔がもう窓の縁にのぞきだしているように思えた。私は再度苦悶の叫び声をたてて、気を失って倒れた。
一四
私が我にかえったときは、もう夜だった。私は粗末な寝台に寝かされていた。天井にゆらめいてるランプの光で、私の両側にも他の粗末な寝台のならんでるのが見られた。私は病室に移されてるのだということがわかった。
私はしばらくのあいだ目を覚ましていたが、何の考えもなく何の思い出もなく、ただ寝台に寝てるという幸福にひたりきっていた。たしかに、他の時だったら、この監獄の病室
前へ
次へ
全171ページ中42ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング