ェ出てきた。
 突然、深い夢想に沈みながらも私は、彼らのそうぞうしい輪舞がやんでひっそりとなったのを見た。すると、私がつかまってる窓のほうへそのすべての目が向いた。「死刑囚だ、死刑囚だ!」と彼らはみな私を指さしながら叫んだ。そして歓喜の声が一層さかんにどっとおこった。
 私は石のように固くなった。
 彼らがどこから私のことを聞きこんでいたのか、どうして私をそれだと見てとったのか、私にはわからない。
「こんにちは! こんにちは!」と彼らはその不逞《ふてい》な冷笑の調子で私に叫んだ。つやつやした鉛色の顔をした終身徒刑囚の一人の若者は、うらやましいふうで私を眺めながら言った。「あいつしあわせだな、刈られ[#「刈られ」に傍点]ちまうんだから。さようなら、お仲間!」
 私の内心にどういうことがおこったかはとても言いえない。まったく私は彼らの仲間だった。グレーヴ死刑場はツーロン徒刑場の兄弟だ。私は彼らよりも下位にさえ置かれていた。私にとって彼らは光栄ある仲間だった。私はふるえあがった。
 そうだ、私は彼らの仲間だ。そして数日後には、この私もまた彼らの観物となることだろう。
 私は身動きする力もうせ
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