レは、そういう反映で太陽の光を見て取ることができるものだ。私は太陽が好きである。
「天気だな。」と私は看守に言った。
 彼はそれが言葉を費やすほどのことであるかどうかわからないかのように、すぐには返事をしなかった。が、次に多少努めてぶっきらぼうにつぶやいた。
「そうかもしれない。」
 私は身動きもしないで、まだ頭はなかば眠り、口には微笑を浮かべて、廊下の天井を染めてるそのやさしい金色の反射に目をすえていた。
「今日はいい天気だな。」と私はくりかえした。
「うむ。」と看守は答えた。「みんな君を待ってるぞ。」
 そのわずかな言葉は、一筋の糸が虫の飛ぶのを妨げるように、私を激しく現実の中に投げおろした。そして稲妻の光に照らされたように、突然私の目に再び映ってきた、重罪裁判の薄暗い広間、血なまぐさい服をつけてる判事らの円形席、茫然《ぼうぜん》たる顔つきをしてる証人らの三列、私のベンチの両端に控えてる二人の憲兵、動きまわってる黒い法服の人々、影の底にうようよしてる群集の頭、私が眠ってるあいだじゅう起きていた十二人の陪審員らが、私の上にじっとすえてる目つき!
 私は立ちあがった。歯はがたがた鳴り、
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