A死骸のまわりに烏《からす》が集まるように法廷のベンチに集めていた。三日前から、判事や証人や弁護士や検事たちが、あるいは奇怪なあるいは血なまぐさい、そしていつも陰惨な宿命的なふうで、幻灯のように私の前を往き来していた。初めの二晩は、不安と恐怖とで私は眠れなかった。三日目の晩は、倦怠と疲労のため眠った。真夜中に、陪審員らを評議してるままに残して、私は監獄の藁《わら》の上に連れ戻され、そこですぐに、深い眠りに、忘却の眠りに落ちたのだった。それがいく日目かに得た最初の休息の時間だった。
そしてまだその深い眠りの底にある時に、私は呼び起こされた。その時は、看守の重い足音や鉄鋲《てつびょう》の靴音や、その鍵鎖《かぎくさり》のがちゃつきや、閂《かんぬき》の太いきしりなどでは、私は昏睡《こんすい》からさめなくて、荒々しい声を耳に浴《あび》せられ、荒々しい手で腕をつかまれた。「起きないか!」私は目を開き、びっくりして体を起こした。その時、監房の狭い高い窓から、隣りの廊下の天井に、それが私の垣間見《かいまみ》ることのできる唯一の天空だったが、そこに黄ばんだ反映のあるのが目についた。牢獄の暗闇になれてる
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