驍アとができる。王様のように室の中に一人きりだ。」
それから彼は外に出て、錠前と海老錠と閂とで私を閉じこめた。
窓はかなり広い四角な中庭に面していた。庭の四方には壁のように、切石づくりの大きな七階の建物がそびえていた。その四つの建物の正面ほど不体裁に露骨にみじめに見えるものはおそらくあるまい。鉄格子づきのたくさんの窓が穴をあけていて、その窓には下から上まで、無数の痩《や》せた青ざめた顔が、壁の石のように積みかさなって、いわば鉄格子の身にみなはめこまれたようにしてしっかりくっついていた。それは自分がやがて登場する番になるのを待ちながらまず見物人となっている囚人どもだった。地獄に面した煉獄の風窓にしがみついている受刑の魂みたいだった。
彼らは皆、まだ何もない中庭を黙って眺めていた。待ってるのだった。そしてそれらの生気のない沈鬱な顔のあいだに、あちらこちら、鋭い強い目が一点の火のように光っていた。
中庭を取り囲んでいる監獄の四角な建物は、すっかり閉じ合わさってはいない。四つの翼の一つは(東を向いてるのは)中ほどで切れていて、隣の翼と鉄柵で続いてるだけである。その鉄柵の向うに、こちらの
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