オい足音、長い廊下の両端から互いに呼び合い答え合う声、などが聞こえた。私の近くの幽閉監房の者たち、懲戒囚たちは、平素よりいっそう陽気になっていた。ビセートルの監獄全体の者が、笑い歌い走り踊ってるようだった。
私はただ一人、その喧騒の中に口をつぐみ、その騒動の中に身動きもせず、驚いて注意深く耳を澄ましていた。
一人の看守が通りかかった。
私は思いきって彼を呼び、監獄で祝いごとでもあるのかとたずねた。「お祝いといえばまあお祝いだ。」と彼は答えた。
「今日は、明日ツーロンの徒刑場へ行く囚人どもに鎖をつけるんだ。見せてやろうか、面白いぞ。」
なるほど、いかに醜悪なものであろうとも何かを見るということは、孤独な幽閉者にとってはありがたいことだった。私はその娯楽を承諾した。
看守は警戒のためにいつもするとおりの周到な処置をほどこして、それから私をまったくなんにも備えつけてない小さなあいている監房に連れていった。そこには鉄格子のはまっている窓が一つあったが、ひじがかけられるくらいの高さの本当の窓で、そこから真実の空が見られた。
「そら、」と看守は私に言った、「ここから、君は見たり聞いたりす
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