。をもっただろう。そして私は好んで、板石の上に散らばってるそれらの断片的な思想を一つに組み合わせ、名前の下にそれぞれその男を見出し、細断されてるそれらの記銘に、手足を切り離されてる文句に、頭の欠けてる言葉に、それを書いた人々と同じく首のないその胴体に、意義と生命とを与えてやったことだろう。
 私の枕ほどの高さのところに、一本の矢に貫かれて燃え立ってる二つの心臓があって、「生涯の愛[#「生涯の愛」に傍点]」とその上に書かれている。不幸なこの男は長い約束はしかねたと見える。
 その横には、三つの角のある帽子めいたものがあって、その上に小さな顔が無器用に描かれ、「皇帝万歳[#「皇帝万歳」に傍点]、一八二四年[#「一八二四年」に傍点]。」と書いてある。
 それからなお、燃え立った心臓がいくつもあって、監獄の中の特質たるこういう記銘がついている、「マティユー[#「マティユー」に傍点]・ダンヴァンを愛し崇む[#「ダンヴァンを愛し崇む」に傍点]、ジャック。」
 それと反対の壁には、「パパヴォアーヌ[#「パパヴォアーヌ」に傍点]」という名前が見えている。その頭のPの大文字は、唐草模様《からくさもよう》
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