sいを涜《けが》すまいとしている。三世紀前からあらゆる死刑台に身を売った彼女も、羞恥心を覚えて以前の商売を恥じている。いやしい名前をなくしたいと思っている。死刑執行人をこばみ、敷石を洗っている。
 現在では、死刑はもうパリの外に出ている。しかるに、ここに言っておきたいことには、パリから出ることは文明から出ることである。
 あらゆる兆候はわれわれに味方する。あの忌《い》むべき機械、なおよくいえば、ギヨタンにとってはちょうどピグマリオンに対するガラテアのようなものであるあの木と鉄との怪物も、落胆し渋面しているようである。ある点から見れば、上に述べた恐ろしい処刑も喜ばしいきざしである。断頭台は躊躇《ちゅうちょ》している。切りそこなうまでになっている。死刑の古い機械は全部調子が狂っている。
 けがらわしいその機械はフランスから立ち去るだろう。われわれはそれを期待する。もしよろしくば、われわれのきびしい打撃を受けて、足をひきずりながら立ち去るだろう。
 そして他の土地へ行って、ある野蛮な民衆のところへ行って、優遇を求めるがよい。トルコへでもない。トルコは文明の風に浴している。未開の民へでもない。
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