チたラテン語の数語、そんなもののために私は、他の囚人らとともに一週一回散歩することが許され、身動きのできなかった緊束衣もつけずにすんだ。いろいろ躊躇《ちゅうちょ》されたのちに、インキと紙とペンも与えられ、夜のランプも与えられた。
毎日曜日には、ミサの式の後で、休息の時間に、私は中庭に放たれる。そこで私は囚人らと話をする。話をせずにはいられないものだ。彼らは、そのみじめな者たちは、みな善良である。彼らはその仕事[#「仕事」に傍点]を私に話してきかせる。聞いてると恐ろしいほどであるが、しかし彼らが自慢誇張してることを私は知っている。彼らは私に隠語を話すことを、彼らの言葉でいえば赤舌をたたく[#「赤舌をたたく」に傍点]ことを教えてくれる。それは一般の言葉の上につぎ合わした一つの言葉であって、見苦しい瘤《こぶ》のようなものであり、疣《いぼ》のようなものである。時とするとふしぎな力をそなえ、恐ろしい光景を見せる。リボンの上にジャムがある[#「リボンの上にジャムがある」に傍点]――道の上に血がある。後家をめとる[#「後家をめとる」に傍点]――絞首される。あたかも首吊り台の縄はすべての被絞首者の寡
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