黷ホ、ガラス窓もない。交差してる太い鉄格子がついていて、それのあちらこちらに、囚人や狂人のやつれた顔がくっついてる。
それはまぢかに眺めた人生だ。
五
到着するかしないうちに、鉄の手が私をつかみ取った。人々は注意に注意を重ねた。私の食事にはナイフもフォークもなかった。緊束衣《きんそくい》が、一種の帆布の袋が、私の両腕を捉《とら》えた。人々は私の生命について責めを帯びてるのだった。私の事件は上告してあった。そのやっかいな事柄がまだ六、七週間はかかるはずだったし、またグレーヴの広場のために私を無事に保存しておくことが大切だった。
初めの数日間私はやさしく取り扱われた。それがかえって私には恐ろしく思えた。看守の敬意は死刑台を思わせるものだ。が、しあわせにも数日たつと、また習慣どおりになった。彼らは私を他の囚人らと一緒に暴虐に取り扱い、私の目に絶えず死刑執行人を映らせるような、不|馴《な》れなていねいな区別をもうしなかった。よくなったのはそのことばかりではなかった。私の若さ、私の従順さ、監獄|教誨師《きょうかいし》の世話、それからことに、わかりもしない門衛に私が言ってや
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