A拙劣で、ほとんど偽善的なものであって、一般の利害よりも他の利害のためになされた。
一八三〇年十月、人の記憶するかぎり、ナポレオンを円柱塔の下に埋めようとの提議を議事日程で退けた数日後、議会は全員泣きはじめ嘆きはじめた。死刑の問題が議題にのぼったのである。どういう機会でかは後ですこし述べるつもりであるが、その時、それらすべての議員の心は突然異常な慈悲の念にとらえられたらしい。各人が争って口をきき、うち嘆き、両手を天に差し出した。死刑とは、ああ何と恐ろしいことか! ある老年の検事長は、血色の法服のうちに老いて白髪となり、血に浸った論告のパンを生涯かじってきた男だったが、突然哀れっぽい様子をして、神に誓って断頭台を憤る旨を述べた。二日間たえまなく、議政壇上は泣き女めいた長広舌で満たされた。それは一つの哀歌であり、喪の歌であり、挽歌の合奏であり、「バビロンの河の上に」の聖歌であり、「マリア立ちいたりき」の聖歌であり、合唱隊つきのト調の一大交響楽であって、議会の上席を占め白昼いかにもみごとな音を出す雄弁家などの楽隊によって演奏されたのである。ある者は低音をもたらし、ある者は金切声をもたらした
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