スの不可侵性を法律の額に記入することは、近代のもっとも寛仁な民衆運動たるこの革命の仕事であるようだった。一八三〇年は一七九三年の肉切り庖丁を折り捨てるにふさわしかった。
われわれは一時そのことに望みをかけた。一八三〇年八月には、多くの寛仁と憐憫とが空中に浮かんでおり、穏和と文明との強い精神が衆人のうちに漂っており、美しい未来が近づいてくる輝かしい心地を人に深く感じさせたので、われわれのじゃまとなっていた他のあらゆる悪事と同様に死刑も、暗々裡の衆人一致の合意で正当に一挙に廃止されるもののように、われわれには思われた。民衆は旧制度のあらゆる古着を燃やして祝い火としていた。そしてこんどのは血ににじんだ古着だった。われわれはそれが多くの古着の積み重なっているなかにあると思った。他のものと同様に燃やされたのだと思った。そして数週間のあいだ、信頼しやすく信じやすいわれわれは、自由の不可侵性とともに生命の不可侵性が未来に対して確保されたものと思った。
はたして二か月とたたないうちに、セザール・ボヌザナの崇高な理想を実際法律上に解決せんがために、一つの試みがなされた。
不幸にもその試みは、粗悪で
前へ
次へ
全171ページ中134ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング