アとである。が、血を流すことをやめさせるのはさらによいことであろう。
それゆえ著者はもっとも高い神聖な荘厳な目標をめざしたい。すなわち、死刑の廃止に協力すること。それゆえ著者は、もろもろの革命がまだ引き抜いていない唯一の柱たる死刑台の柱を打ち倒すことに数年来つとめている、各国の殊勝な人々の希願と努力とに、心底から左袒《さたん》する。そして弱小な者ではあるが、喜んで自ら斧《おの》の一撃を加えて、多くの世紀をさかのぼる昔からキリスト教諸国の上につっ立っている古い磔刑《たっけい》台に、六十年前ベッカリアが与えた切り口を、力のおよぶかぎり大きくしたいのである。
今言ったとおり、死刑台はもろもろの革命から転覆されていない唯一の建物である。実際、革命はめったに人間の血を惜しまない。社会の葉を刈り、枝を刈り、頭を刈るために到来した革命にとっては、死刑はもっとも手放しにくい鉈《なた》の一つである。
それでもうちあけて言えば、死刑を廃止するにふさわしくそれができそうに見えた革命があるとすれば、それは七月革命であった。まったく、ルイ十一世やリシュリューやロベスピエールなどの野蛮な刑罰を除き、人間の生
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