Bなにひとつ欠けてるものはなかった。このうえもなく悲壮な痛ましい光景だった。ことに夜の会議は、ラショーセの戯曲の五幕目のように、情け深いやさしいまた悲痛なものだった。善良な公衆は、何のことかわけもわからずに、目に涙をうかべていた。――(われわれは、その時議会で述べられたものの全部を、同じ軽蔑のうちに包みこもうとするものではない。あちらこちらで、品位ある立派な言も発せられた。われわれもすべての人々とともに、ラファイエット氏のまじめな率直な演説を喝采《かっさい》したし、また他のある意味で、ヴィルマン氏の注目すべき即席演説を喝采した。)
それはいったい何の問題についてであったか。死刑の廃止についてであったか。
そうでもあるし、またそうでもない。
事実はつぎのとおりである。
上流社会の四人の男、申し分のない男、社交場裡に立ち交って敬意をもって遇せられた人物、その四人の男が、ベーコンに言わせれば罪悪[#「罪悪」に傍点]となりマキアヴェリに言わせれば企図[#「企図」に傍点]となるような大胆な行いを、政界の中心で試みた。ところで罪悪にせよ企図にせよとにかく、万人に対して横暴な法律はそれを死刑
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