、店の軒なみは、一つの広場の角で切れた。群集の声はなおいっそう広く甲高く愉快そうになった。馬車は急にとまった。私はうつむけに倒れかかった。司祭が私を支えてくれた。
「しっかりなさい。」と彼は囁いた。その時馬車の後部に梯子《はしご》が持ってこられた。司祭は私に腕をかした。私は降りた。それから一足歩いた。次に向きなおってもう一足歩こうとした。が足は進まなかった。河岸の街灯のあいだに、すごいものを見てとったのである。
おお、それは現実だった!
私はもうその打撃を受けてよろめいてるかのように立ちどまった。
「最後の申し立てをしたい。」と私はよわよわしく叫んだ。
彼らは私をここに連れてきた。
私は最後の意志を書かせてくれと願った。彼らは私の手を解いてくれた。しかし綱はいつでも私を縛るばかりになってここにあるし、その他のものは、あすこに、下のほうにある。
四九
裁判官だか検察官だか属官だか、どういう種類のものか私にはわからないが、一人やってきた。私は両手を合わせ両膝をつきながら赦免を願った。彼は余儀ない微笑をうかべながら、言いたいことはそれだけかと私に答えた。
「赦《ゆ
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