チて、地震のような騒ぎになった。
そこで、待ってる憲兵の一隊が護衛に加わった。
「帽子取れ、帽子取れ!」と無数の声が一緒に叫んでいた。――国王に対してのようだ。
そこでこの私までがひどく笑った。そして司祭に言った。
「彼らのほうは帽子だが、私のほうは頭です。」
一同は並足で進んでいった。
花物河岸は香りを立てていた。花市の日だった。花売娘らは花をすてて私のほうに駆けだしてきた。
真正面に、パレ・ド・ジュスティスの角となってる四角な塔のすこし前方に数軒の居酒屋があって、その中二階は好位置だというので見物人でいっぱいだった。ことに女が多かった。居酒屋にとっては上乗の日にちがいない。
テーブルや椅子やふみ台や荷車などが貸し出されていた。どれにもみなしなうほど見物人が乗っていた。人の血をあてこんだ商人らが声のかぎりに叫んでいた。
「席のいるかたはありませんか。」
そういう群集に対して私は憤激を覚えた。彼らにむかって叫んでやりたかった。
「俺の席のほしい者はないか。」
そのうちにも馬車は進んでいた。馬車が進むにつれて、群集はその後ろから崩れていって、私の道すじの遠くのほうに行って
前へ
次へ
全171ページ中121ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング