フあいだにつっ立っているのを見た時、私は気がくじけてしまった。私は最後の申立てをしたいと求めた。人々は私をここに置いて、検事か誰かを呼びに行った。私はそれが来るのを待っている。とにかくそれだけ猶予を得るわけだ。
 これまでのことを述べておこう。
 三時が鳴ってる時、時間だと私に知らせに人が来た。私は六時間前から、六週間前から、六か月も前から、他のことばかり考えていたかのように、ぞっと震えた。何だか意外なことのような感じがした。
 彼らは私にいくつもの廊下を通らせ、いくつもの階段を降りさせた。彼らは私を一階の二つのくぐり戸のあいだに押し入れた。薄暗い狭い円天井の室で、雨と霧の日の弱い明るみだけがほのかにさしていた。室のまんなかに椅子が一つあった。彼らは私に座れと言った。私は座った。
 扉のそばと壁にそって、司祭と憲兵らのほかになお、数人の者が立っていた。三人のあいつらもいた。
 三人のうち最初のは、いちばん背が高く、いちばん年長で、あぶらぎって赤い顔をしていた。フロックを着て、変な形の三角帽をかぶっていた。そいつがそうだった。
 そいつが死刑執行人、断頭台の給仕だった。他の二人はそいつに
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