フおじちゃま[#「おじちゃま」に傍点]のことは考えてもいない。
 おそらく私は彼女のためにいくページか書くひまがまだあるだろう。他日彼女がそれを読んでくれて、そして十五年もたったら今日のために涙を流してくれるようにと!
 そうだ、私は自分の身の上を自分で彼女に知らせなければならない。私から彼女へ残す名前がなぜ血ににじんでいるかを、彼女へ知らせなければならない。

       四七

 予が経歴

[#ここから2字下げ]
発行者曰――ここに該当する原稿を探したが、まだ見出せない。おそらく、次の記事が示すように、受刑人はそれを書くひまがなかったものらしい。彼が書こうと思いついた時は、もう遅かった。
[#ここで字下げ終わり]

       四八

[#地から5字上げ]市庁の一室にて
 市庁にて!――私はこうして市庁に来ている。呪うべき道程はなされた。広場はすぐそこにある。窓の下には嫌悪すべき人群が吠えている、私を待っている、笑っている。
 私はいかに身を固くしても、いかに身をひきしめても、やはり気がくじけてしまった。群集の頭越しに、黒い三角刃を一端に具えてるあの二本の赤い柱が、河岸の街灯
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