Q集、人家の窓の群集のこと、そこで落ちた人の頭が敷きつめてあるかもしれないあの痛ましいグレーヴの広場に、私のために特に備えられるもののこと、それをしっかりと考えなければならない。
 そういうものに対して覚悟をきめるために、まだ一時間ほどあると私は思う。

       四五

 群集はみな笑うだろう、手をたたくだろう、喝采《かっさい》するだろう。しかも、喜んで死刑執行を見に駆けてくるそれらの自由なそして看守などを知らない人々のうちには、その広場にいっぱいになる群立った頭のうちには、私の頭の後を追っていつかは赤い籠のなかに転げ込むように運命づけられてる頭が、一つならずあるだろう。私のためにそこへ来てるがやがて自分のためにそこへ来るようになる者が、一人ならずあるだろう。
 それらの宿命的な人々のために、グレーヴの広場のある地点に、一つの宿命的な場所が、人をひきつける一つの中心が、一つの罠《わな》がある。彼らはその周囲をまわりながらついに自らそこに陥ってゆくのだ。

       四六

 私の小さなマリーよ!――彼女は遊びにつれもどされた。いま彼女は辻馬車の扉口から群集を眺めていて、もうこ
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