ネいで、そこに隠れたんだ。」
私は再び彼女にたずねかけたが、彼女はやはり声も出さず、動きもせず、見もしなかった。
私たちの誰かが彼女を押し伏せた。彼女は倒れた。
彼女は丸太のように、命のないもののように、ばったり倒れた。
私たちはそれを足先で動かしてみた。それから誰か二人がかりで彼女を立たせて、また壁によりかからせた。彼女にはまったく生きてるしるしもなかった。耳のなかに大声でどなりつけてやっても、聾者のように黙っていた。
そのうちに私たちはじれだしてきた。私たちの恐怖のなかには憤怒の情がまじっていた。誰か一人が私に言った。
「あごの下に蝋燭をつけてやれ。」
私は彼女のあごの下に燃えてる芯を持っていった。すると彼女は片方の目をすこし開いた。空虚な、どんよりした、恐ろしい、何も見てとらない目つきだった。
私は炎をのけて言った。
「ああこれで、返事をするだろうな、鬼婆め。誰だお前は?」
彼女の目はひとりでに閉じるようにまた閉じてしまった。
「これはどうも、あまりひどい。」と友人らは言った。「もっと蝋燭をつけてやれ、もっとやれ。ぜひとも口をきかせなくちゃいけない。」
私はまた
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