V婆のあごの下に火をさしつけた。
 すると、彼女は両方の目を徐々に開き、私たち一同をかわるがわる眺めて、それからふいに身をかがめながら、氷のような息で蝋燭を吹き消した。と同時に、暗闇のなかで、私は三本の鋭い歯が手にかみつくのを感じた。
 私はふるえあがり冷たい汗にまみれて、目を覚ました。
 善良な教誨師が寝台のすそのほうに座って、祈祷書を読んでいた。
「私は長く眠りましたか。」と彼に私はたずねた。
「あなた、」と彼は言った、「一時間眠りましたよ。あなたの子供を連れてきてあります。隣りの室にいて、あなたを待っています。私はあなたを呼び起こしたくなかったのです。」
「おお!」と私は叫んだ、「娘、娘を連れてきてください。」

       四三

 彼女はいきいきとして、ばら色で、大きな目をもっていて、美しい!
 小さな長衣を着せられていたが、それがよく似合う。
 私は彼女をつかまえ、両腕に抱きあげ、膝の上に座らせ、髪に接吻した。
 なぜ母親と一緒には?――母は病気だし、祖母も病気だ。それでよい。
 彼女はびっくりした様子で私を見ていた。なでられ、抱きしめられ、やたらに接吻されながら、なされ
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