》った。「お前《まえ》、何《なん》でそんなことをしたの! まア、いいから、黙《だま》って、誰《だれ》にも知《し》れないようにしておいでなさいよ。出来《でき》ちまったことは、もう取返《とりかえ》しがつかないんだからね。あの子《こ》はスープにでもしちまいましょうよ。」
こういって、お母《かあ》さんは小《ちい》さな男《おとこ》の子《こ》を持《も》って来《き》て、ばらばらに切《き》りはなして、お鍋《なべ》へぶちこんで、ぐつぐつ煮《に》てスープをこしらえました。マリちゃんはそのそばで、泣《な》いて、泣《な》いて、泣《な》きとおしましたが、涙《なみだ》はみんなお鍋《なべ》のなかへ落《お》ちて、その上《うえ》塩《しお》をいれなくてもいいくらいでした。お父《とう》さんが帰《かえ》って来《き》て、食卓《テーブル》の前《まえ》へ坐《すわ》ると、
「あの子《こ》は何処《どこ》へ行《い》ったの?」と尋《たず》ねました。
すると母親《ははおや》は、大《おお》きな、大《おお》きな、お皿《さら》へ黒《くろ》いスープを盛《も》って、運《はこ》んで来《き》ました。マリちゃんはまだ悲《かな》しくって、頭《あたま》もあげず
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