ご》を頂戴《ちょうだい》と言《い》っても、何《なん》とも言《い》わないんですもの、わたし怖《こわ》くなッちゃったわ!」
「もう一|遍《ぺん》行《い》ってごらん。」とお母《かあ》さんが言《い》った。「そして返事《へんじ》をしなかったら、横面《よこッつら》を張《は》っておやり。」
 そこでマリちゃんは又《また》行《い》って、
「兄《にい》さん、その林檎《りんご》を頂戴《ちょうだい》。」
といいましたが、兄《にい》さんは何《なん》とも言《い》わないので、女《おんな》の子《こ》が横面《よこッつら》を張《は》ると、頭《あたま》がころりと落《お》ちました。それを見《み》ると、女《おんな》の子《こ》は恐《こわ》くなって、泣《な》き出《だ》しました。そして泣《な》きながら、お母《かあ》さんの所《ところ》へ駈《か》けて行《い》って、こう言《い》いました。
「ねえ、母《かあ》さん! わたし兄《にい》さんの頭《あたま》を打《う》って、落《おッこと》しちまったの!」
そう言《い》って、女《おんな》の子《こ》は泣《な》いて、泣《な》いて、いつまでもだまりませんでした。
「マリちゃん!」とお母《かあ》さんが言《い
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