は急《きゅう》に恐《おそ》ろしくなって、「どうしたら、脱《のが》れられるだろう?」と思《おも》いました。そこで継母《ままはは》は、自分《じぶん》の居室《いま》にある箪笥《たんす》のところに行《い》って、手近《てぢか》の抽斗《ひきだし》から、白《しろ》い手巾《はんけち》を出《だ》して来《き》て、頭《あたま》を頸《くび》に密着《くっつ》けた上《うえ》を、ぐるぐると巻《ま》いて、傷《きず》の分《わか》らないようにし、そして手《て》へ林檎《りんご》を持《も》たせて、男《おとこ》の子《こ》を入口《いりぐち》の椅子《いす》の上《うえ》へ坐《すわ》らせておきました。
 間《ま》もなく、女《おんな》の子《こ》のマリちゃんが、今《いま》ちょうど、台所《だいどころ》で、炉《ろ》の前《まえ》に立《た》って、沸立《にえた》った鍋《なべ》をかき廻《まわ》しているお母《かあ》さんのそばへ来《き》ました。
「母《かあ》さん、」とマリちゃんが言《い》った。「兄《にい》さんは扉《と》の前《まえ》に坐《すわ》って、真白《まっしろ》なお顔《かお》をして、林檎《りんご》を手《て》に持《も》っているのよ。わたしがその林檎《りん
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