に、おいおい泣《な》いていました。すると父親《ちちおや》は、もう一|度《ど》、
「あの子《こ》は何処《どこ》へ行《い》ったの?」とききました。
「ねえ、」とお母《かあ》さんが言《い》った。「あの子《こ》は田舎《いなか》へ行《ゆ》きましたの、ミュッテンの大伯父《おおおじ》さんのとこへ、暫《しばら》く泊《とま》って来《く》るんですって。」
「何《なに》しに行《い》ったんだい?」とお父《とう》さんが言《い》った。「おれにことわりもしないで!」
「ええ、何《なん》ですか、大《たい》へん行《い》きたがって、わたしに、六|週間《しゅうかん》だけ、泊《とま》りにやってくれッて言《い》いますの。先方《むこう》へ行《い》けばきっと大切《だいじ》にされますよ。」
「ああ、」とお父《とう》さんが言《い》った。「それは本当《ほんとう》に困《こま》ったね。全体《ぜんたい》、おれに黙《だま》って行《い》くなんてことはありやしない。」
そう言《い》って、食事《しょくじ》を初《はじ》めながら、お父《とう》さんはまた、
「マリちゃん、何《なに》を泣《な》くの?」とききました。「兄《にい》さんは今《いま》にきっと帰《か
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