え》って来《く》るよ。」
 それから、おかみさんの方《ほう》を見《み》て、
「おい、母《かあ》さん、これはとても旨《うま》いぞ!、もっともらおう!」といったが、食《た》べれば食《た》べる程《ほど》、いくらでも食《た》べられるので、「もっとくれ! 残《のこ》すのは惜《お》しい、おれが一|人《り》でいただいちまおうよ。」といいながら、とうとう一人《ひとり》で、みんな食《た》べてしまって、骨《ほね》を食卓《テーブル》の下《した》へ投《な》げました。
 するとマリちゃんは、自分《じぶん》の箪笥《たんす》へ行《い》って、一|番《ばん》下《した》の抽斗《ひきだし》から、一|番《ばん》上等《じょうとう》の絹《きぬ》の手巾《はんけち》を出《だ》して来《き》て、食卓《テーブル》の下《した》の骨《ほね》を、一つ残《のこ》らず拾《ひろ》い上《あ》げて、手巾《はんけち》へ包《つつ》み、泣《な》きながら、戸外《おもて》へ持《も》って行《ゆ》きました。マリちゃんはその骨《ほね》を杜松《ねず》の樹《き》の根元《ねもと》の草《くさ》の中《なか》へ置《お》くと、急《きゅう》に胸《むね》が軽《かる》くなって、もう涙《なみ
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