は遠い昔からあの連中を識っています。その頃わたしは奉公人ではなしに、ここの家に住んでいたことがあるのです。あの連中はいずれ私を殺すだろうと思っていますが、そんなことは構《かま》いません。わたしはこの通りの年寄りですから、どの道《みち》やがて死ぬからだです。死ねばあの連中と一緒になって、やはりこの家に住んでいることが出来るのです〉
 いや、どうも驚いたね。女はそんなことを実に怖ろしいほど平気で話しているのだ。僕は薄気味が悪くなって、もう何も話す元気がなくなったので、早《そう》そうに立ち去ってしまった。もちろん約束通りに一週間分の間代《まだい》を払って来たが、そのくらいのことで逃げ出せれば廉《やす》いものさ」
「不思議だね」と、わたしは言った。「そう聞くと、僕はぜひその化け物屋敷に寝てみたいよ。君が不名誉の退却をしたという、その家のありかを後生《ごしょう》だから教えてくれないか」
 友達はそのありかを教えてくれた。彼に別れたのち、わたしはまっすぐにかの化け物屋敷だという家へたずねて行くと、その家はオックスフォード・ストリートの北側で、陰気ではあるが家並《やなみ》の悪くない抜け道にあったが、
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