。三日目に立ちのいてしまった。誰がどう言ったって、家内はもうその家にいるのは忌《いや》だという。それも無理はないのだ」
「君は何か見たのか」
「別にいろいろの不思議を見たり聞いたりしたわけでもないのだが、家具のないある部屋の前を通ると、なんとも説明することの出来ない一種の凄気《せいき》にうたれるのだ。但《ただ》し、その部屋で何も見えたのではなし、聞こえたのでもないが……。そこで、僕は四日目の朝、その家の番をしている女を呼んで、あの部屋は何分《なにぶん》われわれに適当しないから、約束の一週間の終わるまでここにいることは出来ないと言い聞かせると、女は平気でこう言うのだ。
〈わたしはその訳《わけ》を知っています。それでもあなたがたはほかの人たちよりも長くいたほうです。ふた晩辛抱する人さえ少ないくらいで、三晩泊まっていたのはあなたがたが初めてです。それも恐らくあの連中があなたがたに好意を持ったせいでしょう〉
なんだかおかしな返事だから、僕は笑いながら〈あの連中とはなんだ〉と訊《き》いてみると、女はまたこう言うのだ。
〈なんだか知りませんが、ここの家《うち》に執《と》り着いている者です。わたし
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