びゃくえ》の老人も亡霊にちがいないよ」
「じゃ、君だって、亡霊かい」
「どうして?」
「君は、あの船の甲板で、豹《ひょう》のような水夫のために、左胸部を背後から射貫《いぬ》かれて、死んだのじゃないか。僕は、たしかにそれを目撃したのだ。だのに、また生き還《かえ》るなンか、ふしぎだよ。やっぱり、亡霊かもしれないよ」
「そ、そんなことがあるものか。僕は、いったんは殺されたが、あの白衣の老人の手術で、心臓を取替てもらって生き還ったのだ」
「じゃ、白衣の老人の腕前を信じることが出来るだろう。そしたら、あの人を亡霊というのはまちがっている。君が亡霊でないなら、あの科学者だって亡霊じゃないよ。もちろん、人造島をつくった博士だって、亡霊じゃない」
「うむ……。可笑《おか》しいね。何が何だか解《わか》らなくなって来たぞ。……待てよ。じゃ、あのどろぼう[#「どろぼう」に傍点]船だけが、亡霊だったのかもしれないね」
「それなら、僕もそうおもうね。渦巻く海面から、忽然《こつぜん》と消えて無くなるなンか、やっぱり幽霊船だった」そのまに、飛行機は、もう可成《かな》り遠くまで飛んでいた。
「大尉殿。もう一度、あの大
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