なら》んでいるのであるからもう島影を発見しなければならぬが、相変らず茫漠《ぼうばく》たる水また水である。
「はてな。もしかしたら、舵機も、スクリウも、僕のいう通りにならないのかしら」
 そうおもうと、不安は、刻々にましてくる。このまま、針路を誤り、航行をつづけるならば、世界の果ての魔の海へまでも往ってしまうかもしれない。
 が、そんな不安はまだ生優《なまやさ》しかった。やがてのこと、不意に、船の心臓ともいうべき機関の音がピタと停ってしまった。
「あッ!」僕は、おもわず失策《しま》った! とおもった。

     水葬にしろ

 素人機関士の陳《チャン》君が、船橋《ブリッジ》を駈け登って来た。
「山路君。とうとうやっちゃったよ」
「えッ! 何をやった?」
「機関《エンジン》が急に停ったのだが、どこが故障か、てんで解《わか》らないよ」
「そいつは、困ったなア」
「僕が、機関の故障を発見できないくらいだから、君にだって解るはずはないし、もちろん、水夫たちにも解るまい。……山路君、仕方がないから、運を天に任して漂流しよう」
「まア、それよりほかに、手段もないじゃないか」
 僕は、未練にもまだハ
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