「おまえの友人が、見舞に来てくれているぞ」
「えッ!」陳君は、顔をあげて、僕を見た。
「おお、陳君! 僕だ、僕だ」
「おお、[#「おお、」は底本では「おお 」]山路君!」陳君は、余りの悦《うれ》しさに、涙をいっぱい両眼に湛《たた》えて、
「よく、無事でいてくれた」僕も、感激の涙を流して、陳君の手を固く握りしめた。
 怪老人と老博士。これもまた、感激に身を顫《ふる》わしながら、手を握り合った。
「あなたは世界最大の科学者です」これは老博士だ。
「ありがとう」白衣の怪老人は、少年のように、羞《はに》かんで応えた。
「あなたを、亡霊とおもったのは、われわれの不明でした」
「いや、亡霊であるかもしれない。何故なら、この船は、足を失った死の船だからねえ」
「そうだ、死の船!」
「わしは、人間の心臓を取替えることが出来、死んだ人間を生き還らせることさえ出来るが、死んだ船を蘇生さすことは出来なかったよ。ハハハハハ」
 なるほど、この偉《すぐ》れた生理学者は、黒船の心臓を生かすことは出来ないのだ。僕は、
「博士、あなたは、人造島をつくった方です。人造島の心臓部の設計をしたぐらいですから、この黒船の
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