この人造島の心臓ともいうべき、動力所を襲うて、これを占拠するのじゃ。われわれは、動力所に拠《よ》って、敵を迎える。動力が停《とま》って、凍結剤を海中の鉄管に送ることが出来なくなれば、この島は、忽ち溶けてしまうのだから、それを怖れて、敵も手出しは出来まい」
「でも、動力所を占拠して、人造島の心臓を抑えても、数台の飛行機が、彼等の手中にある以上、動力を停めて、人造島を溶かすと威《おど》かしても、彼等は、そのままに、飛行機に分乗して、危機を脱することが出来るじゃありませんか」
「なアに、その前に、ちゃんと飛行機を焼いて、敵の足を奪っておくのさ」
「えッ! 飛行機を焼いたら、僕達も、結局、人造島と運命を倶《とも》にするだけじゃありませんか」
「冒険に心配は禁物じゃ。科学のともなわぬ冒険は、もう古い。わしの人造島は、自力をもって、時速十三海里の航海が出来る。つまり、この人造島は、大洋の浮島であるとともに、一種の方船《はこぶね》なのさ。しかも、海中深く潜んでいる、すばらしい幾つかの推進機は、動力所の押ボタン一つで、猛然と回転してくれるのじゃ。動力所の心臓部を抑えながら、わしと君は数十人の敵を同伴し
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