緒に死んでくれるか、それとも、名もない雑役夫のために、海に叩き込まれるか。その二途《ふたみち》よりないのだが……」
 少し考えていた僕は、
「あんな雑役夫に殺されるよりか……」
「おお、やっぱり、わしとこの島に残されるか」
「はい」
「うむ。それでこそ、義も情もある日本人じゃ。君は、わしの唯一の味方じゃ……では、わしの本心を明《あか》してあげよう」
「え! 本心ですって?」
「そうじゃ。わしは、いかにも古ぼけた兵器製造機じゃ。けれども、むざむざと、アメリカの兵器会社の奴等のために、海洋の真ン中に棄てられはしないぞ。君と協力して、彼等の暴力に抵抗するのじゃ」
「では、僕とともに、この島を脱《ぬ》け出そうと仰《おっ》しゃるのですか」
「脱出ではない。この島に住む狼共《おおかみども》に、戦いを挑むのじゃ。わしは、最初からその決意でいたが、君を味方に得て、いよいよ勝算が十分だ」
「でも、味方は、わずかに二人、敵は、それに十倍する人数、たいてい勝てますまい」
「ところが、わしは、科学者じゃ。科学の力は百人、千人の凡人の比ではない」
「作戦を洩《もら》してください」
「わしの作戦はこうじゃ。まず、
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