、何か曰《いわ》くのありそうな人造島の秘密を、何とかして探りたいとおもったので、むざむざと、海へ放り込まれたくはなかった。
「僕は、どんな労働でもやりますから、この島に置いて下さい」扉《ドア》の外へ、つまみ出されるのを拒《こば》んで、こう哀訴したが、青年技師はいよいよ冷酷だ。
「日本の少年なら、いいかげんに観念しろ。……さア諸君、面倒だから、この少年を麻袋に詰めて、海ン中へ叩き込んでくれたまえ」
「オーライ」作業服を着た男たちは、声とともに、寄ってたかって僕を捉《とら》え、用意の麻袋を頭からすっぽり被《かぶ》せてしまった。そして、藻掻《もが》く手足を押込んでしまうと、袋の口を麻縄《ロープ》で厳重に結《ゆわ》いてしまった。ああ、僕は、こんどこそ海底の藻屑《もくず》と消え失せなければならないのか。
やがて、麻袋に詰められた僕は、一人の雑役夫に担がれて、氷の島の岸へ運ばれた。
僕の生命は、風前の灯火《ともしび》だ。
中国服の老人
雑役夫は、麻袋をいったん置くと、こんどは、その両端を二人で持って、高く差しあげた。「ワン」「ツー」「スリー」の号令とともに、一思いにドブンと、海
前へ
次へ
全97ページ中30ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
寺島 柾史 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング