アメリカの兵器会社の技師が発明した人造島で、われわれ技術員は、その耐熱試験をやっているのだ。氷の島が温帯で、いや熱帯圏内に入っても、果して耐久力があるか否かを試験しているのだ。そこで、この島の秘密を、日本の少年に盗まれては、せっかくの、秘密特許の人造島も、無価値になるじゃないか」
「僕は、少年です。断じて人造島の秘密を盗むようなことはありません。日本へ帰るまで、この島に置いてください」
「いかん。君を救けたのは、君の労働力を必要としたからだ。つまり、君に、炊事《すいじ》やそのほかの仕事をして貰《もら》おうとおもったのだが、不幸にして君は、模倣《もほう》の巧みな日本人だったじゃないか、一刻も、この島に置くわけにはいかん」
青年技師は、卓上の呼鈴《ベル》を押した。と、それへ、同じ作業服を着た数名の男が現われた。
「この少年を、追放してくれたまえ」
青年技師は、冷酷無情にも、そう命じると、数名の男は、矢庭《やにわ》に僕の肩や、手をとった。僕はこれまで、幾度か生死の境をとおって来ているので、またも、この奇怪な氷の島から追放され、海へ放り込まれることを、それほど怖《おそ》れなかったが、しかし
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