からしてちょっと当りがつかない。しかしとにかく筋を一つ立てて見よう。彼はほんとにそれをやって見る気になっていろいろと真面目に考えた。考えてもなかなかおいそれ[#「おいそれ」に傍点]と面白そうなことが思い浮んで来ない。継児《ままこ》だの孤児だのを材料にしても今様に仕組んだ哀れな物語をよく活動写真などで見るが、そんなものは何ぼ何でも我慢が出来ない、それではやはり、ごく古いところで、「むかしむかしあるところにお爺さんとお媼《ばあ》さんとがありました」かな。これもあんまり白っぱくれていて感心出来ないが、まあそんなことにして初めるとしよう。
「爺さんは山へ薪かりに、媼さんは川へ洗濯《せんたく》に行きました。……媼さんがじゃぶじゃぶ洗濯をしていますと、川上の方から大きな桃が二つ、どんぶらこ、どんぶらこと流れて来ました。その時、媼さんは何と言ったっけな。(小さな桃あっち行け、大きな桃こっちへ来い)それ、それ。……媼さんに拾われた大きな方の桃は皆様ご存知の通り、その中から桃太郎さんが産まれ出て、のちにお腰に日本一の黍団子《きびだんご》をぶら下げて鬼ヶ島征伐に出かけるのですが、さて、あの時媼さんに拾われ
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