六月
相馬泰三
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)身体《からだ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)拍手|喝采《かっさい》した
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)つい[#「つい」に傍点]
−−
まあ、なんと言ったらいいだろう、そうだ、自分の身体《からだ》がなんのこともなくつい[#「つい」に傍点]ばらばらに壊《くず》れてゆくような気持であった。身を縮めて、一生懸命に抱きしめていても、いつか自分の力の方が敗《ま》けてゆくような――目が覚《さ》めた時、彼は自分がおびただしい悪寒《おかん》に襲われてがたがた慄《ふる》えているのを知った。なんだかそこいらが湿っぽく濡《ぬ》れている。からだのどこかが麻痺《しび》れて知覚がない。白い、濃淡のない、おっぴろがった電燈の光が、眼の玉を内部へ押し込めるように強く目に映じた。自分のいるところより一段高いところに、白い詰襟《つめえり》の制服をつけた警官が二三人卓に向って坐っているのがちら[#「ちら」に傍点]と目に入った。
(おや、ここは警察署だな)と彼は思った。すべてのものが静かに
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