ちょっとした名士が病死したのでその人の閲歴やら、逸話やらで、不時の記事が多くて割に忙しかった。それに二面の方では支那《しな》問題、バルカン問題、米国の排日問題やらで、電報、通信、電話などがしっきり[#「しっきり」に傍点]なしにやって来てごたごたしていた。
編輯長の卓では、主筆、編輯長、一面主任、二面主任、H代議士などいう連中が明日の社説のことで互いに意見を述べ合っていた。
原稿を工場へ持って行くボーイ、ゲラ刷を工場から持って来るボーイなどがパタパタと上草履を鳴らして小走りして出たり入ったりした。中にはまだ雇われたてのがあって何か間違ったことをして、ひどく叱り飛ばされているのなどもあった。彼のいるすぐわきのところに、車井戸のような仕掛けで受付から郵便物だの通信類だのと運び上げるものがあって、それが間断なくギーギーきしッていた。それにつれてそれを知らせる鈴が幽かに鳴っていた。そしてそれがこの編輯局全体に一種の調子をつけているようにも聞かれるのであった。
編輯の卓は一面二面三面と順に長く三列にならべられてある。その奥に一段低くなって外務主任の大きな卓があり、それを起点にして二列に長く外
前へ
次へ
全42ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
相馬 泰三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング