日より風邪《かぜ》の気味にて三週間ばかりぶらぶらし、かた/″\碌《ろく》な事これなく候。(中略)向ふ三四年間は或程度までの金を作る為め雇人として働き、その間は多少読書もし、至つて平静(今までは余りに落付かなかつた)な生活を送る考《かんがへ》に候。近来種々感ずるところあり、如何《いかに》してもこの国に永住の事に決心せしに就《つ》いては、来春早々、此較的人種に区別をおかぬ東部へ出向く考に候。そして相当の資金を得し後は再び田園に引込み、今まで及び昨今のやうでも困るから多少余裕のある趣味ある生活をしたいと思ひ居り候。(後略)
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(前略)この五日より洗濯業研究に着手致し候。昨今は唯《たゞ》器械的に他人の工場内《こうばない》に働き居り候へども二ヶ年位後には本式に独立してやる考に候。
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(前略)不運は何故《なぜ》かくまで執拗《しつえう》に余に附纏《つきまと》ふことに候や。今春は複々《また/\》損失、××銀行破産の為め少しばかりの預金をおぢやんに致し候。その後とて引つゞき一つ所に働き居り候はば斯《か》くまで不如意にも陥らざりしものを、……(中略)当今は渡米以来一等の貧乏
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