く気の毒千万の事に候、右は一つには苺作《いちごさく》が耕すに易《やす》く比較的利益多きところより権《ごん》も八も植付に急なりし結果当××市郊外のみにて約三千|英加《エーカー》といふ苺畑出来候為め産出過多加ふるに今回の経済界の大恐惶に出会ひし事とて実際話しにならず候。余は幸ひ苺作には力を入れ居《を》らざりし為め左程《さほど》にも無之候《これなくさふら》へども、目下のところ五百|弗《ドル》程の負債出来奮闘真最中に候。尤《もつと》も春作は安価の為め失敗せしもので、main crop は一昨日より出荷を始め候へばこれにて何とか当分の遣繰《やりくり》付く事と存ぜられ候。(後略)
*
(前略)……もとより創業費とて不充分なりし事故《ことゆゑ》、如何《いかん》とも進退出来ざるやうになり、昨年|極末《ごくまつ》遂《つひ》に七百弗足らずの負債を背負ひ農業の方手を引き候。その後は市内働きと事きめ就働し来《きた》りしも、不拍子の時は不拍子々々々と或程度まで重なるものにて或時は主人破産せし為め働き金も大半|無《ふい》になり、或時は主人の店火災に罷《かゝ》りし為め余の働口一時途切れ、加ふるに去月十
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