昨今のところでは何事も堪忍《かんにん》に堪忍、他日の勝利を期するのみにて只管《ひたすら》愚となり、変物となり居り候《そろ》。(後略)
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(前略)昨年は無経験に加ふるに、収穫半ばに不時の天災に出会ひし為め全く失敗したものの、今年《こんねん》は多少様子もわかり、且つは幾分考ふる所もあり、こゝ一番と努力せしこととて今後非常の天変などのない限りは多少の収益が見られることと思ふ。今二週間も経てば青豌豆《あをゑんどう》の収穫に取かゝるべく、しかしこれは副産物として利益も細いが、余|今年《こんねん》の本稼《ほんかせ》ぎは実に六月初旬よりなれば目下その方の準備で仲々忙しい。(後略)
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(前略)既に御身にも新紙|等《など》にて御承知の事と被存候《ぞんぜられさふらふ》が、当国は昨秋以来経済界に大恐惶《だいきようくわう》有之《これあり》、農産物はその種類の何たるを問はず低廉無此|或《あ》るものは市場《いちば》へ出荷するもその運賃さへとれぬやうな次第|殊《こと》に当地方の苺《いちご》耕作者の如《ごと》き実に惨澹《さんたん》たるものにて破綻《はたん》又破綻、目も当てられぬ有様、全
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