に候。今度こそは何とかして或る一定の専門技術を修得し、一日も早く普通労働者の域を脱したく、裁縫学校へ入学志願致し候。いろ/\の抱負もさる事ながら、一人前《ひとりまへ》に自分の口を糊《のり》することが先決問題かと被存候《ぞんぜられさふらふ》。この頃つく/″\その様な事を考へるやうに相成《あひな》り候《さふらふ》。(後略)
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(前略)一昨々年春以来他へ転居候為め、御書面昨日|漸《やうや》く落手致し候次第、その後の御不沙汰《ごぶさた》何とも申訳|無之《これなく》候。迂生事《うせいこと》、昨年七月より近郊にて(現今のところ)約六|反歩《たんぶ》の土地つき家屋を借受け、昨秋切花用として芍薬《しやくやく》二千株程植付け候。されど、今年は勿論《もちろん》、明年とて格別の収入無之かるべく候へば、当分のうちは日曜の外毎夜電車にて下町へ通ひ何かと労働に従事致し居る次第、お問合せの妻帯などは迚《とて》も迚も以ての外のこと、未《いま》だに独立も出来ず相変らずの貧乏書生に候。向ふ三四年中には一度皆様にお目にかゝりに帰朝致したく存じ居候。
 迂生昨年五月以来、一晩も欠かさず冷水浴を継続致居り候為め
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